製造工場から客先へ直送する場合に中間商社が気を付ける点や出荷方法を紹介いたします。
目次:
- 情報が丸見えになる恐れ
- 中間にあなたがいる理由
- 開示できない情報をどうするか
- 書類の抜き取りサービス
- Door To Doorのクーリエなら全て対応可能か?
- 直送の輸入申告はどうなるのか
- 客先C社自身が輸入者となる場合(あなたは輸送の指示のみ)
情報が丸見えになる恐れ
まず、この直送の取引の関係者を整理してから本題に入ります。
あなた(中間の商社)を含む3社が関わります。↓は荷物の流れです。
荷送人S社=あなたの仕入先である製造工場(SupplierのS社)
↓
中間のT社=あなた(Trading companyのT社)
↓
荷受人のC社=あなたの客先(CustomerのC社)
ドアツードアサービスで直送する場合、客先C社はあなたの仕入先S社を知ることになります。また、あなたの仕入先S社も、客先C社を特定することになります。
なぜなら「送り状」に荷送人S社と荷受人C社を明記するからです。
もしも、この両者があなたを排除して勝手に取引を始めようとしたら、中間にいるあなたの出番がなくなってしまいます。
このような勝手なことをする心配がない場合に直送が成立すると思います。この点を確認してから次へ進みます。
中間にあなたがいる理由
この点を改めて確認しておきましょう。
日本企業が商社を中間に入れる主な理由としては、現地と直取引を適正に行うノウハウが十分でないことが挙げられます。ノウハウこそが中間いる立場の付加価値でありますし、客先にとってはあくまで日本の企業と取引をしているとう安心感もあったりするわけです。
通常、オリジナル製品の量産においては、発注の段階で仕入先(製造元)の情報を提出することが一般的だと思いますので、輸送する段階で問題になることはないかなと思います。
イレギュラーな直送に関しては十分に注意が必要で、直送の可否について貿易事務担当者が判断するのではなく、責任者の指示を仰ぐ必要があると思います。
開示できない情報をどうするか
会社名等の開示に関してはクリアしたとして、今度は書類の記載事項に関して考えてみます。
商社のあなた(T社)宛てのインボイスを、仮にあなたの客先C社たとしたら、どんなことが起こるでしょうか?
客先C社は、あなたの買い値を知ることになります。あなたがいくらの利益を取っているのかが丸見えになるわけです。
利益取り過ぎなんじゃないの?なんて言われたら商売あがったりですし、そのような印象をもたれて信頼関係にキズがついたら、これも商売にとって良くないと思います。
このような開示できない情報が丸見えになることを避けるためには、必ず添付書類を「抜き取り」した上で配達されなければなりません。
書類の抜き取りサービス
Door to Doorのクーリエサービスでは、書類抜き取りサービスといって、日本国内に入ってから客先へ配達されるまでの間に、貨物に添付されている書類を抜き取ってくれるという便利なサービスがあります。
ただし、確実に書類を抜き取ることができるサービスではないので注意が必要です。特に週末フライト、週明け配送となりますとその不確実性が格段に増すようです。私の体感としては、平日フライト~輸送であれば問題なく抜き取りしてもらえていたと思います。
貨物が日本に入ってくる前に業者側へ伝えておくとスムーズです。すでに国内で動いているものに抜き取りを指示することはおそらく難しいと思います。
混同しやすいのですがEMSのような国際郵便サービスでは書類の抜き取り・差し替え等のオプションのサービスはありません。
UPSやFedexなどの民間業者を利用し、柔軟な対応をお願いするのが良いと思います。
Door To Doorのクーリエなら全て対応可能か?
基本的にどこの業者もオプションで書類の抜き取り、差し替えに対応してくれると思います。先ほど述べたように週末のフライトなどで土日を挟むと手続きを確実に行えない場合がある、と厳しめに言われることがあります。
事前に業者にオプションサービスに関して、出荷予定を伝えて確認の上で進めるのが良いと思います。
直送の輸入申告はどうなるのか
輸入申告は、仕入工場S社が、あなたT社宛てに発行したInvoiceに基づいて行われます。一般的には書類抜き取りを依頼しつつ、インボイスのデータを業者へ送ります。
では、貨物にダミーの書類が添付されていたとしら、どうでしょうか。
たとえば、S社が貨物にダミーのインボイスを添付したとします。ダミーのインボイスはY社(あなた)の買値よりも、もっと言うとC社の買値よりも低い金額になっていました。これは明らかにアンダーバリューの書類でダミーだということが、C社も気づくでしょうか。誤ってC社が見てしまったとしても問題はなさそうです。
しかしながら、ダミー書類で輸入申告を行ってはなりません。アンダーバリューインボイス(実際の取引金額より低い金額を記した書類)で輸入申告し納税することは、すなわち脱税になります。必ず正しい金額で申告する必要があります。
客先C社自身が輸入者となる場合(あなたは輸送の指示のみ)
三国間の貿易はこの流れになります。
この場合も、書類の抜き取り+書類の差し替え申告は必要です。
書類の差し替えは、Y社(あなた)がC社宛てに発行する正しい金額の書類のことです。更に、輸入に係る税金はC社へ請求されるように手配します。
これは業者によりますが、取引に係る三者全てが、輸送業者のアカウントを持つ必要がある場合もあります。業者によって条件が異なると思いますので事前に相談すると良いと思います。
荷物を出荷する時点で、税金の請求先がC社であることを送り状に明記します。この辺りは業者によって、決まりがあるので事前に確認が必要です。
最後に・・・
三者全員の利益に配慮した輸送の指示を出す必要があります。一般的に、この点においては中間にいる商社が一番詳しいと思います。わからないことは業者へ確認し、クリアにして1つずつ進めていきます。
出荷当日に慌ただしく確認するよりも、事前に確認を済ませておくとスムーズで確実ですし、担当者ご自身の心理的負担も少ないと思います。