希望納期のより良い伝え方、ベストな納期回答をもらうための調整のコツについて書いています。また、客先の無理難題にどのような姿勢で付き合うかにも触れています。
一部はメールの例文つきです。
中小企業の事務員は、事務的な作業に留まらずちょっとした交渉も業務に含まれることがあります。調整の考え方は他の業務にも応用可能と思いますのでコツを覚えておくて便利です。
目次:
希望納期【急ぎ】の書き方
短納期の発注における希望納期の書き方についてです。
▼NGな書き方
抽象的な希望納期の表現は避けましょう。
例えば、[至急]や[A.S.A.P.(※)]という表現は適切ではないと思います。
※As soon as possible=できるだけ早く(外国との取引でよく見かけます)
このような具体的に日付を指定しない書き方は、要求が抽象的なため、相手に判断を委ねている状態です。
「急ぎらしいけれど日時指定はないし、出来上がり次第でいっか」というふうに判断されてしまう可能性が高いです。少なくとも「急いでほしい」という意図は伝わりにくいです。
人は判断を委ねられるのは苦手ですし、自分に都合の良いように解釈するものです。
このような言い方では、自分が望むような回答を得ることは難しいと思います。
▼良い書き方
具体的に日時を指定して書くと良いと思います。そして、相手のベスト納期を引き出すことを目標にします。
気持ちとしては[至急]と書きたくなりますが、ここは短納期を承知の上で日付を指定して書きます。
ただし日付の指定には注意が必要です。通常リードタイム30日の製品について、例えば5日後の日付を書くのは明らかに無理な要求で相手にされないと思います。
ちょうど良いところで例えば15~20日後の日付を書いてみるのが良いかなと思います。(取扱い製品によりますが。)
このように日時を出すと「さすがにリードタイム15日は無理だけど、20日ならできると思います」と相手が妥協案を出しやすくなります。
相手が返答しやすいように依頼することがポイントです。
これは外国への発注においても同じように言えることです。
個人的にA.S.A.Pは「本当にいつでもいい、どうでもいい」時以外は使わないつもりでいます。(先方は使ってきますが、私は全くといっていいほど使いません。)
前倒しの要求を受けた場合
短納期の要求に対しては思うところが諸々ありますが、ひとまずは「協力してあげる」という精神で対応するほかないです。
見積もりには価格もリードタイムも明記したにも係らず、結局は「遅い」「もっと早く」という意味不明なことを当然のように言ってくることが珍しくありません。あまりにも横暴だと思うのですが、実態として発注側の立場が強く、こういった一方的な要求は当たり前になっています。
大手の取引先の要求だと一層拒否することは難しく、こういう時は相手も困っていると思って協力してあげる必要があります。
余談ですが、働き方改革って結局は大手最終顧客の無理難題を見直しさせることから始まるような気もします。異常な短納期、過剰な品質要求がまかり通っているんです…なんとかならないですかね…
▼客先への一時的な回答
もちろん納期短縮の協力はしますが、約束してしまうと後が大変だと思います。ひとまず下記のように回答するのが良いかなと思います。
「恐れ入りますが、リードタイムは見積もりしたとおりです。調整いたしますがお約束は難しいと思います。申し訳ございませんが、一旦確認・調整の上ご連絡いたします。」
▼仕入先への前倒し依頼
客先からの要求をベースに仕入先へ依頼します。
ここでも具体的に日付を指定して依頼するのがポイントです。尚、あまりにも無茶な日程は協力を得られませんので避けましょう。
「誠に恐れ入りますが、納期の前倒しをお願いしたくご連絡しました。短納期で申し訳ございませんが、〇日に出荷していただくことは可能でしょうか。客先の在庫状況がひっ迫してきており前倒しの依頼を受けています。お手数ですが、ご確認とご調整のほどお願いいたします。」
と、こういった内容で協力をお願いしてみます。
▼客先への回答例文
仕入先の協力により前倒しできた場合の回答には注意点があります。
せっかく調整できたのでベストの日程で連絡したい気持ちはわかりますが、それをやってしまうと後で苦しくなる可能性があります。
生産や輸送の遅れを加味して、数日の余裕をもって納期を伝えることが良いと思います。
「調整の結果少し早まりまして、今のところ〇日納入予定となっています。生産・輸送の状況により数日前後する可能性がありますので日程が確定したら改めてご連絡いたします。恐れ入りますが、この日程にて引き続き進めさせていただきたく存じます。」
というような回答が望ましいと思います。
万が一遅れが生じても余裕を持って伝えていれば、客先に対する説明も謝罪もしなくて済みます。
客先の方でも、遅延によって生産スケジュールを組み直すなど、対応に追われることも避けられます。
例文はとても簡素にしていますので「させていただく」や「誠に申し訳ございませんが」等、ご自身のいつもの言葉遣いに直して活用していただければと思います。
最後に
自分の欲しい 【ターゲット】のちょっと上の要求をしてみる、といのがよく言われる交渉術です。価格交渉などでもよく使われます。
「相手が回答しやすいように」というのは特別なスキルというよりは、相手への配慮と、相手もまた人間だということへ理解がベースにあるかなと思います。ビジネスにおいても自分だったらどう思うかと考えてみることは大事なことです。
たとえスキルとして知らなくても、相手の立場を考えることで依頼の仕方が変わり、仕事の質はアップすると思います。